2017年も終わりに近づきますが、この1年も国内外で様々なAI・AI関連のニュースが報道されました。
AIによる新たなサービスや商品が発表されると、便利さや進化のスピードに驚くとともに、このままでは本当にAIが人間の仕事を奪うのではないかという疑念が現実味を帯びてきます。
この記事では、AIが人間の雇用や仕事に与えるインパクトについて考えます。
過去から学ぶ「AIによって雇用はどう変わる?」
産業革命では機械に仕事を奪われる一方、新しい仕事は増えた
先日の記事では、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授は2013年に論文「雇用の未来」に触れながら、近い将来なくなる仕事・なくならない仕事をご紹介しました。アメリカで最大36%、ヨーロッパでは最大32%の仕事が消えると推定されています。
Avintonが考える AIに仕事を奪われない人材育成と社会貢献
ただし、AIの発達により消える仕事もあれば、新しい仕事も生まれます。18世紀後半にイギリスから始まった産業革命でも、機械の登場により人間の仕事が奪われるのではないかという危惧がありましたが、結果的には新しい仕事が増えました。
「産業革命では、製織プロセスの作業がますます自動化され、機械の管理や複数の機械を操作して円滑に動作させるなど、機械ができない仕事に集中する必要がありました。これが大きな成果に繋がり、19世紀のアメリカでは、1時間に1人の製織者が生み出す粗布の量が50倍に増加し、布のヤードあたりの労働量は98%減少しました。布は安価になり、需要が増えた結果、織り手の雇用は1830年から1900年の間に4倍になりました。」
Automation and anxiety
第一次産業革命と第四次産業革命(人工知能革命)の違い
産業革命の定義は以下の通りです。
・第一次産業革命 : 18世紀後半、蒸気という新しい動力が出現
・第二次産業革命 : 1865〜1900年頃、電気・石油・化学・鉄鋼の発達による大量生産が実現
そして、統一的な見解は得られていないものの、以下が続きます。
・第三次産業革命 : 20〜21世紀、コンピューターが登場し自動化が進む
・第四次産業革命 : 近年、モノがインターネットに繋がるIoTが進み、それをAIが制御
第一次産業革命と、これから来る第四次産業革命との大きな違いは、AIの進化のスピードの早さとスケール感です。たったここ数年でもAIの進化はめざましく、パターン認識・繰り返し作業・検索などを中心に、多くの仕事が短期間に次々とAIに置き換えられています。
すでにAIがこなす高度な仕事
弁護士
無料の弁護士チャットボットのDoNotPayは、2015年にイギリス、2016年3月にアメリカでもリリースされました。不当な駐車違反を受けた時に相談すると、不服申し立ての嘆願書作成を支援してくれるサービスです。実際に25万件の相談を受け、16万件の違反切符を取り消すという実績を挙げました。
駐車違反に異議あり!大学生が開発した弁護士ボット「DoNotPay」の実力|IBM
教職(ティーチング・アシスタント)
2016年、ジョージア工科大学では、3月から4月にかけての約1ヶ月間、AIのティーチング・アシスタントが、オンラインフォーラムの学生からの質問に回答していました。この間、学生は誰も気づかなかったそうです。
IBMのワトソンを活用し、過去4万件の学生からの質問を学習させました。はじめのうちは不自然な回答も含まれており、観測者のチェックが必要でしたが、最終的には人間によるチェックを介さず、直接フォーラムに回答できるまでに至りました。
ジョージア工科大、TAがAIだったことに学生の誰も気づかなかった|GIZMODE
警察
中国の武漢では、テンセントが開発するAIを用いて顔認証を行い、無人の警察署をオープン予定です。免許証の登録・遺失物の申請などのサービスが提供されます。他業種の例にもれず、公務員の業務も、AIにより自動化されていきます。
AIによって運営される無人の「AI警察署」が中国で近日登場予定|GIGAZINE
人事評価
セプテーニ・ホールディングスは、2015年秋頃から、AIが分析したデータに基づく人事戦略を本格的に開始しました。性格・勤怠情報・成果・上司や部下や同僚の評価などを数値化し、全社員の潜在退職者ランキング上位の人材を適正が高い部署に異動させることにより、退職率の引き下げに成功しました。
採用
ソフトバンクでは、新卒採用業務の効率化を進めるため、エントリーシートをAIがチェックすることで、作業時間を従来の75%も削減することに成功しました。必ずしも正しい結果が得られるわけではないという課題は、AIが不合格と判断したエントリーシートのみ、人がチェックするという工夫で解決したそうです。IBMのワトソンを活用しています。
面接官がAIになる日 「個人の尊厳」どう守る?|日本経済新聞
AIによって変化する仕事の未来
AIが代替する仕事
教職や採用など、少し前までは機械が行うなど考えられなかったような仕事も、今や部分的にAIが担いつつあります。
AIに置き換わるのは、パターン認識・繰り返し作業・検索など、ある程度の訓練や練習を必要とするものの、それほど高度な技能ではないミドルスキルを必要とする仕事です。
するとわれわれは、ルーチン作業から解放され、より創造的な仕事に集中できるメリットがあります。労働時間が減り、プライベートや自己実現にかける時間の増加も期待できます。
求められるスキルの変化
1790年には90%だったアメリカの農業人口は、産業革命を経て、長い時間をかけ1990年に2%に至りましたが、農業従事者が他の産業に移行する過程で必要とされたスキルは、3つのR(Reading リーディング、Writing ライティング、Arithmetic 算術)でした。
かつては重要なスキルだった3つのRも、AIは簡単に代替でき、すぐに追い抜かれるスキルです。
AIが世の中の重要な業務を担うようになると、それをコントロール・改善・維持するために、プログラミング・ロボティクス・エンジニアリングなどに関連する仕事の需要は高まります。
そのための高度なITスキルや技術的知識スキルを習得できれば、AIを駆使して創造的な仕事を行えます。
ベーシックインカムという解決策
発想を変えて、AIと競ったり管理することを避ける道も模索してみましょう。
テスラのCEOであるイーロン・マスクは、自動化が進み生産性が上がる一方で、雇用が減少すると、ベーシックインカムが実現する可能性が高いと主張しています。
ベーシックインカムとは、政府が全国民に対し、最低限の生活を送るのに必要な額の現金を定期的に支給する政策です。AIのお蔭で働かなくて良い生活は夢のようですが、実現する可能性はどのくらいでしょうか?
アメリカでも大きな動きなし
シリコンバレーでも最大規模のベンチャーキャピタルであるY Combinatorは、独自にベーシックインカム実験の設計を進めています。選ばれた3,000人は、最大5年間、月額50〜1,000ドルを受け取る予定です。
このような小規模な実験は行われているものの、国家規模では目立った動きはなく、トランプ政権でも現時点では特に触れられていません。2016年夏のインタビューの中でオバマ元大統領は、ベーシックインカムは今後10〜20年というスパンでの議論になると言及しています。
スイスの国民投票では反対派が約8割
スイスでは、2016年6月5日にスイスでベーシックインカムの是非を問う国民投票が行なわれたものの、結果は反対が76.9%で否決されました。
反対派の意見としては、島国ではないスイスでベーシックインカムが導入されれば移民が殺到する可能性が高いことや、具体的な支給額が不明確だったことなどが挙げられています。
2017年時点の日本では、まだ実験にも至らず
総務省のデータでは、2017年時点の日本の人口は約1億2,600万人でした。国民1人に対してベーシックインカムを一律で月8万支給する場合、年間約100兆円が必要になる計算ですが、これは同年の国家予算とほぼ同額です。
社会保障費の32兆円を割り当てても足りない規模の金額であり、実現に向けた様々な問題の中でも、特に財源の確保は大きな課題です。
まとめ
AIによる自動化で仕事の生産性が上がりつつありますが、それによりベーシックインカムが支給され、労働時間を最小限におさえて自己実現にかける時間を増やせる生活の実現は、残念ながらまだまだ先になりそうです。
当面の間は、ミドルスキルが必要なタスクの多くがAIにより自動化された社会で、さらに人間が付加価値を出すには、高度なITスキルや技術的知識が必要になります。
Avintonでは、今後10年20年と中・長期で活躍できるエンジニアを輩出するために、データから需要の高い技術を分析し、今ある本人のスキルやキャリアビジョンと照らし合わせながら、エンジニアのキャリア形成をサポートします。
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