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今や企業にとって生き残るために重要なビジネス戦略となっているデジタルトランスフォーメーション。最近よく耳にする言葉ですが『デジタルトランスフォーメーション』とは一体何なのでしょうか。そしてDXにおけるビッグデータやAIが果たす役割とは?
この問いを紐解くために、本記事では、各業界のリーディングカンパニーをデータドリブン企業に導くためのアイディアを共有します。データ分析の重要性と、デジタルテクノロジーをビジネスのあらゆる分野に導入する際の課題について見ていきましょう。
この記事でご説明したいこと
- デジタルトランスフォーメーションとは:IoT(Internet of Things)、エッジコンピューティング、ビッグデータ、AI(Artificial Intelligence)などのデジタル技術を組織がどのように活用するかを根本的に見直すこと。
- スピードの重要性:既存の企業がリスクを避けたいと思うのは当然のことですが、スタートアップなどの新規参入による変化のめまぐるしい市場で競争力を維持するためには、スピードとアジリティが必要です。
- DXがもたらす影響:デジタルトランスフォーメーションは、ビジネスプロセス、ビジネスモデル、ビジネスドメイン、企業文化といったビジネスの各部分に大きな影響を与えます。
デジタルトランスフォーメーションとは
私たちは今、データがビジネス上の重要な意思決定と戦略の基盤となるようなビッグデータとAIの時代に生きています。新たな技術が急速に出現する変化の激しいこの時代は、多くの企業にとっては脅威である一方、かつてないほどのチャンスをもたらしており、デジタルトランスフォーメーションはあらゆる企業にとって重要な要素となってきました。デジタルトランスフォーメーションとは、企業がデジタルツール、プロセス、人材を活用して、ビジネスパフォーマンスを根底から変えるための抜本的な見直しを意味します。多くの企業が競争力を維持し、製品やサービスを差別化し、効率性を高めるためにデジタル技術をビジネスのあらゆる分野に統合することは避けられない状況になってきました。
IoT、エッジコンピューティング、ビッグデータ、AIについて
近年活用が拡大しているテクノロジーをより深く理解していくために、デジタルトランスフォーメーションで最も利用されているテクノロジー:IoT、エッジコンピューティング、ビッグデータ、人工知能(AI)について簡単にご説明します。
- IoTは、センサーやソフトウェアなどが組み込まれた物理的な機器で構成されています。これらのデバイスは、ネットワークやクラウドに接続され、生成されたデータを送信・交換します。IoTはスマートファクトリーやスマートアグリカルチャーから、自動車業界の自律走行、エンドユーザー向けのスマートホームオートメーションまで多岐にわたって様々な分野で応用されています。
- エッジコンピューティングは、ネットワークの混雑や遅延といったクラウド関連の典型的な課題を解決するものです。「エッジ」とは、複雑なタスクが遠隔地のクラウド上で行われるのではなく、「ネットワークのエッジ」で行われることを意味します。エッジコンピューティングでは、AIによるデータ分析や画像分類が実際のスマートデバイス(エッジAIカメラなど)上で行われるため、帯域幅の削減やリアルタイムでの推論が可能になります。自律走行車の安全性や現場での作業者の安全性など、ミリ秒単位での判断が求められるようなスピードが重要になる状況では特に重宝される技術です。
- ビッグデータとは、データを実際のビジネス価値に変えるための体系的なアプローチのことです。企業が利用できるデータの量は劇的に増加していますが、データソースやフォーマットの種類も増えています。このようなデータからビジネスインテリジェンスを得るためには、まずデータを収集し、蓄積し、処理し、分析していく必要があります。
- 人工知能(AI)は、学習や問題解決など、これまで人間の知能が必要とされていたタスクを、スマートな機械が実行することで、知能を発揮することを意味します。データサイエンスの分野では、AIによるデータ分析によって、これまでにない知見が得られます。また、機械学習アルゴリズムは、パターンを検出するだけでなく、精度の高い予測や最適化の機会を明らかにします。
リスク回避によって起こること
急激な変化には高いリスクが伴うため、多くの企業では、新しいテクノロジーを自社のコアビジネスに導入することに躊躇する傾向があります。これが「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉が広がっていかない原因なのではないでしょうか。 この記事では、デジタルトランスフォーメーションが、何かひとつの項目を達成したからといって完了するようなものではない、ということを認識していただきたいと思っています。デジタルトランスフォーメーションは、新興企業によるイノベーションに対する「単なる対策」ではなく、継続的なプロセスです。成功して持続するためには、経営層の主導のもと、戦略的なコミットメントを全面的に行うことが理想的であり、また、深い運用知識も必要となります。
デジタルトランスフォーメーションとコーポレートイノベーションの違い
さて、新しいテクノロジーの導入に伴う課題と効果について触れる前に、誤解されがちな「デジタルトランスフォーメーション」と「コーポレートイノベーション」という言葉を区別しておくことが必要です。 貨物船を想像してください。技術的な枠組みがあるだけでは、港を離れて荷物を運び、価値を生み出すことはできません。貨物船には、航路を設定し目的地まで安全に航行することができる乗組員が必要です。コーポレート・イノベーションとは、ここでいう乗組員、すなわち戦略的目標を設定し、実際のプロセスを舵取りするための要素ということになります。 一方で、デジタルトランスフォーメーションは旅そのものと言っても過言ではありません。それは、現状維持から変革を遂げた状態になるための旅です。貨物船の例のように、ビジネスの成功は、目的や課題を解決するための最新のツール、効率的なプロセス、そして同じ方向を目指せる乗組員がいるかどうかにかかっています。 以上のことからもわかるように、デジタルトランスフォーメーションと企業のイノベーションは、相反するものではなく、切っても切れない関係にあります。
スピード感の重要性
急速に変化していくことを求められる時代において、企業が生き残り、競争力を維持するためには、イノベーションが重要な要素になってきます。例えば、スタートアップ企業は新しい技術をより早く開発することができ、その規模の小ささゆえの変化への対応・俊敏さが、多くの既存企業に影響を与えるようになりました。経営資源を集中して投入できるビジネスがある新興企業だからこそ、こういった動き方も可能なのです。 私たちは今、コロナウイルスの流行をはじめとする社会や経済の大きな変化の中にいます。もはや既存のビジネスモデルの将来性や持続性にも確証はありません。世界全体が変化している今、生き残るためには適応することが重要です。だからこそ、わたしたちは課題にどう対処するかだけでなく、いかに早く対処するかを見つめなおす必要があります。 大規模な顧客基盤、幅広い技術や業界のノウハウ、人材、金融資産など、既存企業には小規模なスタートアップ企業にはない大きな強みがあります。しかし、デジタルトランスフォーメーションの時代には、データというもう一つの資産が価値を持ち、重要になってきます。
デジタルトランスフォーメーションの4つの側面
デジタルトランスフォーメーションが一面的なものではないことは、これまでの説明ですでにお分かりいただけたと思います。この多面的な構造を無視してしまうと、トランスフォーメーションの試みは失敗してしまうかもしれません。デジタルトランスフォーメーションは、ビジネスのすべての領域に影響を与える包括的なアプローチです。TechNexus社のマネージングディレクターであるアンドリュー・アナコーン氏は、『多くの企業がプロセスや組織の変革のみに焦点を当てているが、実際には、企業を「未来につなげる」ためにの変革には4ステップある』と指摘しています。
1. プロセスの変革
データの関連性についてはすでに述べたとおりです。現在、かつてないほど多くのデータが生成されていますが、これらのデータは、ただ眠っているだけでは意味がありません。これからの技術の価値は、企業がいかにデータを分析し、”ビッグデータ “を活用するかにかかっています。 かつてヘンリー・フォードが起こした世界初のライン生産方式の発明のような革命を、今はAIが起こすようになり、企業の働き方を大きく変えています。業務レベルでは、機械学習のようなAI技術はプロセスの効率を向上させ、生産コストを大幅に削減することができます。 エッジコンピューティングのような技術は、ネットワークに接続されていなくてもAIデバイスがその場で複雑なタスクを実行することを可能にします。これは、従来のクラウドベースのアプローチに比べて大きな利点です。AIモデルは、企業の特定の要件や戦略的目標に基づいて、さまざまな方法で学習することができます。 例えば、製造業では、現場でいわゆるエッジAIカメラを活用し、AIの画像解析によって部品の欠陥を検出することによって製品における部品の不具合を回避することを実現しています。また、AIモデルを学習させることで、機械の中の異物(金属部品など)を検出することができ、コストのかかる機械の故障だけでなく、現場での危険な事故も防ぐことができます。 このようなデジタル技術によって組織のプロセスを変革することで、いわゆる「スマートファクトリー」や「スマート農業(Smart Agriculture)」への道が開かれます。
2. ビジネスモデルの変革
企業は、デジタル技術を活用して従来のビジネスモデルを変革できるようになり、市場も常に変化しています。そのため今現在企業が価値を生み出している方法は、近い将来時代遅れになるかもしれません。 企業はビッグデータを収集してサービスの利用状況などを把握することで、戦略的な意思決定を実現できるようになりました。これらのデータを蓄積・処理した後、AIアルゴリズムを用いたデータ分析を行うことにより、小売業であれば買い物客の行動や気分、自動車業であれば車両の使用状況やメンテナンスの頻度など、固有のパターンを検出します。 このように、既存製品の改良や新製品の発売、未開拓の市場や有望な新流通チャネルへの進出、収益の生み出し方の見直しなど、これまでにないイノベーションのチャンスが様々な領域に転がっています。 ビジネスモデル・トランスフォーメーションの有名な例として、アンドリュー・アナコーンは、Netflixの動画配信と、AppleのiTunesによる音楽配信の再発明を挙げています。このテーマと密接な関係にあるプロダクト・イノベーションとは、実際の製品を開発・再設計・改良を行ったり、顧客にとっての真の利益を追求することです。 例えば、日常的な機器にAIを追加することで、人々の生活をより安全にしたり(スマートな監視システム、スマートウォッチ、インテリジェントなカーセンサー)、より便利にしたり(AmazonのAlexaやAppleのSiriのようなスマートアシスタント、反復的なタスクの自動化)することができます。例を挙げると、日本の保険会社であるJustInCaseは、保険サービスをより身近なものにすることを目指し、スマートフォンのアプリ上で保険契約を締結できるようにしています。このアプリは、スマートフォンに内蔵されたセンサーにも接続し、AIがアクティブなライフスタイルを検出すると、ユーザーは健康保険料の割引を受けることができるという仕組みです。
3. ビジネス領域の変革
さらに一歩進んで、ビジネスドメインの変革とは、特定の業界の既存企業が別の業界に参入することを指します。かつては克服できない技術的な障壁と考えられていたものが技術活用により参入障壁が低くなり、場合によってはデジタル技術の活用により異業種への参入を容易にしました。され始めているのは、デジタル技術が大量に利用できるようになったおかげです。 ビジネス領域の変革は一見リスクを伴う試みのように思えるかもしれません。現在の市場シェアを拡大するために実績のある企業の中核的な強みに投資することは当然のことのように思えますが、業界の境界がますます曖昧になり、かつての「非競争相手」が業界を変える存在になれば、そういった試みも必要となってくるかもしれません。そのような場合には、新規事業を積極的に推進し、可能性を引き出すことを検討してみてはいかがでしょうか。 例えば、オンライン小売業としてスタートしたAmazonが、オンデマンドのクラウドコンピューティングプラットフォームとAPIを従量課金制で提供し始め、その結果、子会社であるAmazon Web Servicesが、IT業界を大きく変えてしまうほどの大企業になったように。 データ分析における機械学習などの新技術をデジタル変革プロセスの一環として導入することが、これまで未開拓だったビジネス領域においても新たなチャンスを発見するための出発点となるでしょう。
4. カルチャー変革
デジタルトランスフォーメーションは、ビジネスのあらゆる分野に影響を与える長期的な変革プロセスです。成功のためには、経営陣とチームメンバーが協力してプロジェクトを実行しなければなりません。新しいテクノロジー活用を実現し、企業のイノベーションを成功させるためには、まず双方で共通の考え方を持つことが重要です。 従来、多くの企業では失敗に対する許容度はあまり高くはありませんでした。しかしビッグデータやAIなどのデジタル技術を企業のイノベーションの原動力として活用するには、一定レベルの実験、失敗、反復が必要です。「リーン・スタートアップ」のアプローチは、「早く失敗して、早く学ぶ」という原則に従っています。つまり、(隔離されたテスト環境で、ですが)早く失敗すれば、貴重な洞察を得られる一方で、巨額の損失を被ることはありません。 人間に関わるすべての変革プロセスと同様に、コミュニケーションは共通のマインドセットを生み出す上で最も重要です。デジタルトランスフォーメーションとは、単にデジタルテクノロジーを使いこなすための新しいスキルを身につけることだけではなく、刻々と変化するデジタルの世界に適応する方法を学び、イノベーションの環境で失敗することに慣れていくことも含まれます。 さらに、デジタルトランスフォーメーションの領域では、データエンジニア、データサイエンティスト、イノベーションマネージャーなど、テクノロジーに強い人材の獲得競争が激化しているため、採用プロセスの再構築も求められるようになりました。
Avintonが提供する価値
Avintonは、ビッグデータやAIなどの言葉が今日のように認知される前から、さまざまな領域でデータ関係のプロジェクトを扱ってきました。今日では、進行中のプロジェクトのほとんどがビッグデータやAIソリューションに関連するものです。革新的なデータ管理およびデータ分析ソフトウェアを提供することで、デジタルトランスフォーメーションの成功に必要なすべてのツールをお客様に提供しています。 その他データマネジメントやマシンビジョンを用いたAIを対象とした自社ソリューションから、高度なITコンサルティングサービス、オンサイトのエンジニアリングサービスまで、お客様のニーズに合わせて様々なサービスを提供しています。 ここまで読んでいただいてありがとうございました。次回は、データ駆動型企業になるための6つのステップについて、そしてなぜ多くのデジタル変革の取り組みが失敗してしまうのかについてご紹介していきます。お楽しみに!
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